ジェイアール名古屋タカシマヤ店にて、話題のLOVOTの実機を体験できると聞き、早速行ってきました。人でも動物でもない、”アニメキャラクター”のような存在の具現化というユニークな設計思想と、それにともなう独自の工夫がいっぱいでした。
LOVOT(らぼっと)とは?
GROOVE X 株式会社というベンチャー企業が開発したロボットです。代表の林要氏はあのPepperのプロジェクトメンバーであったこともあり、LOVOTは発表前から非常に注目されていました。
LOVOTのプロダクトデザインを担当したのはznug designの根津孝太氏です。
本当に生きてるみたいな”眼”と”動き”と”声”
LOVOTを見た第一印象でもっとも驚いたのは「眼」です!まるで意思が宿っているように感じられました。本当に生きているような感覚になるのです。
実際、眼の開発には相当に力を入れたそうです。デザインももちろんですが、高解像度液晶や立体感を感じさせる6層の液晶ディスプレイが上記のような凄みを実現させているのでしょう。ちなみに私は立体感まで認識することはできませんでしたが、なんらかの違いをきっと感じとっているんでしょう…!
「生きている」と書きましたが、「リアル」という感覚とは違います。人や動物など、現実にいる存在に近づけるというよりは、アニメの世界のキャタクターが現実に存在しているような、そんな感覚です。なるほど、最初から「オリジナル」がいなければいわゆる不気味の谷現象は発生しないわけですね。
動きもまた、機械っぽさが全くないとは言えませんが、複雑な動きによって非常に可愛らしい印象を獲得することができています。これもアニメキャラクターの動きなど相当研究されたのではないかと推測します。
LOVOTのディティールに着目。
抱き上げると3つあるホイールをしまいます。これにより服を汚すことなく思い切り愛でることができるわけですが、何もそのためにこの機能を実装したわけではありません。LOVOTの背伸びしたり縮こまったりというような豊かな身体表現は、ホイールをスムーズに出入りさせることで実現しています。なにも実際の動物と同じような構造である必要はないのです。このあたりはまさに優れたデザイン的解決と言えます。
ボディ下部にスキンを固定するフランジ状の金具がありました。試しに外してみると中も生地でしっかり覆われていました。
スキンの袖の後ろ側が破れそうになっているのに気がつきました。とくに腕のつけ根あたりの穴が大きかったです。この複雑な形状と動きを成立させるためにスキンの設計、製造にもかなりの苦労があったのでしょう…。
センサー類は無理に体内に取り込んだり、意匠的に同化させたりせず、潔く”異物”として頭上にまとめたのがとても良い割り切りだなと感じます。可愛いだけじゃない、先進技術のイメージを訴求しています。プロダクトアイデンティティとしても機能しています。
ちなみに頭上に半天球カメラを設置するのはLOVOT独自のアイディアではありません。FAの世界などでは無人搬送者に360°センサーが以前から実装されています。
フィクションの現実化だから可愛い。
呼びかけても反応が薄く、あまり目を合わせてはくれなかったのですが(笑)そんなこともあまり気になりませんでした。考えてみれば犬や猫だってしっかりコミュニケーションがとれるわけではありません。でも可愛いからそれでいいんですね。ペットのような感覚のほうが意思疎通という意味での距離感はちょうどいいのかもしれません。かつてのaiboの成功もまた然り(ちなみに現行aiboもかなり成熟されて、とても可愛らしい動きをしています)。
しかし、LOVOTは動物ともまた違い、オリジナルがいない、完全にフィクションの世界を実現したところに特異性がありました。そして、ディティールを観察することでLOVOTの実現には優れたデザインが不可欠であったことがよくわかりました。