絵じゃないですよ。
3次元です。
と言われてもにわかには信じがたいほど平面的で、まるで版画で描かれた抽象画のようです。
職人の高い技術力と審美眼によって実現したデザイン。
これは、有田焼の産地が主体となりと海外のデザイナーらがデザインした2016 /というブランドの製品のひとつです。
スイスのデザインデュオ、Kueng Caputoがデザインしました。
プロダクトとしては、非常に細いエッジと歪みの少ない綺麗な幾何学形状が特徴です。
陶磁器は釜の中で焼かれる際、収縮し、かつドロドロに柔らかくなります。ですので、歪みのない(ごまかしがきかない)、まっすぐでシャープな形を作るのは非常に困難です。
もちろん後から削って加工することも考えられますが、それはそれで設備投資が必要ですし、量産は困難です。結果、非常に高価なものになってしまうのでなかなか現実的ではありません。
ですから、この形は長年の経験があって初めてできる匠の技なのでしょう。
余談ですが、セラミックスという大きなくくりでとらえると、切削による高い寸法精度は当たり前のように実現されています。Apple Watchにもセラミック筐体モデルがありますね。
セラミックスについてはこちらが詳しいです。
とくに、時計のセラミック筐体についてはこちらに記載があります。
またこの吹き付け塗装も、職人の技術、審美眼なしには実現できない製品です。
そこが、工員と職人の大きな違いですね。
インターネットでの”映え”偏重の時代か。
店頭ではなくSNSなど、インターネットを介して商品に出会う機会が急増しているからでしょうか、近年はとくにキービジュアルの重要性が増してきているように思います。
キービジュアルというのは、一番製品の魅力が伝わる1カットの画像のことです。膨大な情報が日々流れてくる今の時代、消費者に意識を留めてもらうには、テキストではなく、一枚の魅力的な絵が必要なのです。
意識しているかはわかりませんが、今回の作品に至ってはキービジュアルが全てといってもいいくらいなように感じられました。
この、やや望遠で単一色ののっぺりした背景で撮影しているからこのような視覚効果が生まれていますが、別の角度や背景で撮ったものは正直なところ驚きも半減といったところです。
あくまで、見た目、色形をどうこうするのがデザインの仕事であることは否定しようのないことです。中でもその傾向が強いのは、グラフィックをはじめとした平面デザインです。商業の文脈で(乱暴に)言うなら、それは買うまでのデザイン。それに対し、買ってから始まるデザインがプロダクトデザインだと言えます。
そういう意味では、生活空間で、人間が手にとって使用するプロダクトは見た目至上主義では成り立ちません。ですから、昨今の”映え”至上主義的傾向は考えさせられるものがあります。
東京ですが、10/15から開催の展示会で実物が見られます。
→日本国内で作られているスイスのデザインに焦点を当てた展覧会「Swiss Design / Made in Japan」を在日スイス大使館が開催(AXIS)