東京モーターショーが開催されている最中、銀座のNISSAN CROSSINGにて展示されているコンセプトカーNissan IMsを間近で撮影してきました。360°から間近でじっくり観察することで色々な気づきがありました。
※現在は展示されておりません。
モーターショーより、すぐそこにあるクルマのほうが学びが多い。
Nissan IMsとは?
セダンともクロスオーバーとも違う魅力的なフォルムの「Nissan IMs」は、将来の「ニッサン インテリジェント モビリティ」を体現した電気自動車(EV)のコンセプトカーです。
驚くほど広い室内空間に「2+1+2」の独自のシートレイアウトを採用しており、高級感あふれる「プレミア」リアセンターシートを装備しています。滑らかでセクシーなエクステリアはシンプルな縦横のラインで構成され、長いホイールベースとウエストライン、特徴的なAピラーやリアウィンドウなど、個性的なスタイルでありながらすっきりしたシンプルなシルエットに仕上げられています。
https://www.nissan-global.com/JP/DESIGN/NISSAN/DESIGNWORKS/CONCEPTCAR/IMS/
IMsは今年の頭に北米国際自動車ショーで発表されたモデルで、旬のクルマではありません。しかも東京モータショーの最中、東京にいるのになぜそちらを見に行かず、IMsなのか?
それはもう単純に、モーターショーは人が多すぎてよく見えないからです。流し見で数秒「見る」のと一台をじっくり時間をかけて「見る」のでは得られる情報量や気づきの質がまったく違います。新しいものでなくとも、いつでもどこでも可能なその辺を走っているクルマをじっくり観察するほうがコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう(笑)。
それでは、IMsを360°からじっくり観察してみましょう。
全体外観。
ボディ横側、フェンダーの上に走る稜線が伸びやかな印象を与えています。この稜線を作り出す2つの面は直線に近い断面で、刃物で削り出したような気持ちの良い面です。フェンダー上側の面のねじれによって稜線がドアのあたりで消えていくあたり、非常に抑揚が効いていて魅力的です。また、サテン調の塗装がそれをさらに際立たせているように感じます。
ライトのクローズアップ。
厚めのレンズ表裏にエッチングで荒らしたような細かい同じ模様がそれぞれ刻まれています。静止画ではわかりにくですが、見る角度によってモワレ的な立体感を表現しています。
量産車ではレンズの肉厚にコストや光学の点で制限があるでしょうし、光源が直接見えることなど法規の問題もあります。そういった事情からか、なかなか見かけないデザインです。
ホイール前方の、ライトを覆うような矩形の造形に注目しました。
非常にとがっています。量産車でこのような造形をみた記憶がありません。
その理由として考えられるのは、まずは衝突安全のための自主規定があるため。各社それぞれ違うでしょうが、内装でもだいたい3アールくらいとっていたりします。(それで自動車の内装は丸っこい印象になっているのかもしれません。)
また、このバンパーまわりについて言えば衝突安全性の観点から金属は使用されず、もっぱら樹脂になります。ということで、フロントドアの見切りまで続くこの部品は樹脂製を想定していると思われます。そこはやはりアドバンスモデルですからね。
アールの小さいエッジはこの箇所に限らず、車体全体で採用されています。これがもたらすシャープな印象が非常に今までとは違う、未来感を漂わせるのに一役買っていると思われます。
通常自動車のボディは板金のプレス成型です。その板金を曲げる際の法則で、「内側の最小曲げアールは板厚に等しい」というものがありますが、最小アールになるような成型は強度や歪みなどの点でも難易度が高く、量産車ではやりにくいのかなと想像します。その点オール樹脂ボディなら実現できそうです。
しかし、この造形だとバンパー側とホイールアーチ側は別部品になるでしょうから、このエアインテークの裏側にも部品を取り付けないと裏側が見えて格好悪いという、コスト高な造形ですね。
この華奢な造形、ホイールはやはりカーボンなどを想定しているのでしょうか。
今ではもう当たり前になったサイドカメラです。当たり前なのでわざわざそれとわかるような表現をしておらず、とても小さく(細く)収納されています。走行時はこれを展開するわけですが、実際は風切り音など問題が出そうな形状です。
テールライトも、フロント同様に模様が重なって立体的な演出です。
「IMs」エンブレムが斜め下を向かないように配慮してあります。
2+1+2という変わった構成のシートです。後部座席の両側アームレストを上げると後ろ側3人席になるようです。1人で後部座席を贅沢に使用するなら、という視点は他にも色々なアイディアが広がりそうです。普通のファミリーカーでも採用してほしい視点だと思いました。
ステアリングはくるくる回すことをもはや想定しておらず、正面視界やディスプレイの視認しやすさに徹底しています。自動運転がすぐそこまで来ているわけで、ステアリングはもはや回せれば良い程度の造形です。
ドライバーからは見えませんが、メーターやディスプレイの後ろ側には装飾的な造形があります。3Dプリントが量産に実用化されればこのようなデザインが実写にも採用される日が来るのでしょうか。
コンセプトカーは絵に描いた餅ではなかった。
コンセプトカーについては、どうせ商品化しないでしょ?お祭りを盛り上げるためにやってるんでしょ?という認識の方が少なくないと思います。私もそう考えていたフシがあります。しかし、今回じっくり観察してみてわかったことは、決していい加減な気持ちでデザインしているわけではないということです。結果として量産には至らないことが多いわけですが、デザインしている人たちは絵に描いた餅で終わらせるつもりはなく、実車にすることを本気で考えているのだなというとこが伝わってきました。